ここでは、鉱物採集とは何処で・何を・どのように採ってくるのか、

また、必要となる装備や心構えなどを御紹介致します。 それらは

当然人それぞれでしょうが、この趣味における一般論+私の主観を

少々、という感じでお届けしたいと思います。         

鉱物の採れる場所
探し方の一例
装備と用途
マナーと心得
採集品の整理
その他


1、鉱物の採れる場所

前項でも説明したとおり、鉱物は石の分子レベルでの最小単位で 

ある為、コレクションにするには1種類の鉱物の塊、できれば結晶

している事が理想です。 そうなると採集に適した場所は限られて

来ます。 理屈を言っても仕方がないので具体例を挙げてみます。
<鉱山>
日本の鉱山は、現在でも稼業している所は極僅かになっています。 採集に適するのは「ズリ」と呼ばれる捨石場で、主要鉱石以外の無駄な石はここに捨てられており、この中に美しい結晶や貴重な鉱物が含まれている事があります。


<採石場>
花崗岩や珪砂、石灰岩等の採石場もよい鉱物産地になります。 但し、こちらは大抵が稼業中であり、しかも一部のマナーの悪い採集者のおかげで私達も白い目で見られ、立入りを断られることも少なくありません。 キチンと許可を得て立入り、断られても無理に入らず素直に引き下がりましょう。
<川>
鉱山や採石場などは、すぐ近くに川が流れている事が殆どです。(これには理由があります) それ以外にも、風化した岩石中にあった結晶が川の流れで洗われて出たりもする為、ふるいがけやパンニングなどをする事もあります。

その他にも,山などで岩が露出している所(露頭)等,様々な

場所で行うのですが,岩が見えていれば何処でも良い,という

訳ではなく,地質学的に見てある程度鉱物が成長できる様な 

条件が必要です。 例として,水晶を探してみましょう。  

水晶は,(一般的には)石英が結晶したもののことを言います。

ポピュラーな鉱物で,いろんな場所から産出しますが,ここでは

前項に出てきた花崗岩から探すことにします。 花崗岩は普通,

石英の一粒はせいぜい数ミリといったところですが,いろんな 

花崗岩を見てみると中には(長石や雲母も)センチ単位になる 

程,粒の粗いものもあります。このように,岩石を構成する鉱物

が大きく成長した部分を「ペグマタイト」といいます。    
ペグマタイト中の晶洞
ペグマタイトの石英は,時に大きく塊になったり,細長い脈となり 部分的に「晶洞」と呼ばれる空洞が出来ています。この晶洞内は  自由な空間であり,石英が本来の姿である結晶に成長するのに   最適な場所となるわけです。つまり,ペグマタイトで石英脈または 石英塊をたどり,晶洞(ガマとも言います)を見つけるというのが 水晶探しの手順(の一つ)です。              
  
2、装備と用途
1,ハンマー

当然,石を割ったりする時に使います。ですからやはり 

釘打ち用ではなく,石割り用のもの。0.6〜1.5kg

位で大小1本ずつあると勝手がいいでしょう。     

2、ルーペ 

日本で取れる鉱物は以外に小さな物が多い。また、よく

似ているが,微妙な特徴の違いを持つものも多いため,

ルーペは必携です。 肉眼で見える物でも,拡大すると

その美しさに感動できたりもする。 現地で使う事も多い

為,虫眼鏡タイプの物ではなく折りたたみ式の卵型のもの

の方が断然使いやすいと思います。 最低でも,倍率8倍

以上でレンズ径1.5cm以上はあった方が良いでしょう。

3、新聞紙,袋など

採集した鉱物を持ちかえる時,まとめて袋に入れたりすると

石同士が当たって結晶に傷がついたり,壊れたりします。  

新聞紙などで1つ1つ包んでそれを防ぎます。 また,1日に

2箇所以上の産地ヘ行く場合など,大きめの袋に場所別に  

分けて入れておくなどの工夫もしておきましょう。     

4,地図 

とりあえずはロードマップなどでも構いませんが,産地は大抵 

地図に載ってなかったり,道無き道を行く事もあります。 また

途中までの目印や状況などを書き込めた方がいいので,出来れば

国土地理院発行の地図を別に用意すると便利。5万分の1または

2万5千分の1の物が良く使われているようです。      

5、その他 

行こうとする場所によっても変わってきますが,そのほかにも

ブラシ,たがね,バール,ピンセット,千枚通し,スコップ,

ツルハシ,ふるい,バケツ,皿(パンニング用)等があり、 

私は念の為,大半の物を車に積んでいくようにしています。 

また,安全の為ヘルメット,ゴーグル等も使われる事があります。

現地での鉱物の鑑定用に磁石やナイフ,紫外線ライト等も欲しい

ときもあるし,怪我に備えてバンソウコウや薬も持って行きたい。

これらをなるべく必要なだけ,コンパクトにしておく工夫も大切

でしょう。                        

6、服装について

とにかく自然が相手なので,丈夫で汚れてもいい服装を。 

夏でも長袖,冬は着込み過ぎて動きにくくならない様に気を

つけて下さい。。 帽子orヘルメットに軍手(すべり止め付)

は必携,ジーンズならあまりスリムでない物の方が動き易い

と思います。 靴はスニーカーなどよりも長靴が断然良いです。

私はリュックを持って行きますが,これは道具や採集品を入れて

おけば,険しい場所でも両手が開く為安全に移動できるからです。
  

3,マナーやルールについて
例えば釣りや昆虫採集ならば,何匹か採ってもまた生まれ

てきますが,鉱物は結晶を作るのに長い年月を要します。

また,採れる場所もある意味特殊である事から,マナーや

心構えもしっかり頭にいれておいてください。     

1、事前の情報収集 

現地までの道順,採れる鉱物の特徴など,事前にしっかり 

調べておきましょう。 道に迷ったり,現地で鉱物の特徴も

判らずやたらと石を割って貴重な鉱物を壊したりする事が 

あっては他の人にも迷惑となります。          

2、採集の許可 

稼業中の鉱山や採石場は勿論,私有地となっている場所  

では,立入り・採集の許可は必ず取ってください。 無断で

入られた為,立入り禁止になった貴重な産地がたくさんあり

ます。 必ず許可を貰い,断られても無理に入ったりしない

ようにしてください。                 

3、安全の確保 

危険な場所で気をつけるのは当然ですが,石の割れ口で    

手などを切ったり,蛇やヒル(熊も?)などの危険もあります。

崖などでは落石に十分注意し,廃坑であっても坑道内には絶対に

入らないで下さい。 (実際、何人も亡くなっています)   

4,自然を守る 

基本的な事ですが,ゴミは持ち帰る,タバコの不始末・吸殻を捨て

たりしない。 又,動植物を傷つけるのは最低限にするべきです。 

その他,天然記念物に指定されている鉱物や国立公園内では採集は

禁止されています。                     

5、その他の注意

採集した石を別の場所で捨てたりすると,それを見つけた人が  

その場所で出た物と勘違いしてしまう恐れがあるので,最悪捨てる

にしても採った場所にしましょう。 また,いくら大量に見つけた

としてもあまり欲張って採りすぎない事。 何せ相手は石です。 

重い荷物を持っての移動は危険を伴います。 良い物を幾つか選ぶ

ようにして残ったら次に来た方へのお土産に置いておくくらいの 

ゆとりがあっても良いのではないでしょうか?         

4,採集品の整理
採集した標本は,分類して整理しておきます。 市販のケース

や自作の標本箱などに入れておきますが,なるべく標本には  

ラベルをつける事です。 ラベルの書き方は人によって違います

が,少なくとも鉱物名(和名・英名),採集地は記入しましょう。

組成式,採集日なども記入すると良いでしょう。 分類の方法 

にしても日付別,産地別,大きさ別など自由ですが,一般には 

化学組成別に分類するのが良いとされているようです。    
英名は基本的に学名です。貰い物や購入品は採集地欄を産地としても良いでしょう。

5、その他
鉱物が取れる産地の場所や種類,見分け方などは、実際に

経験していかないと判らない部分もありますが,まずは    

専門書を買うか同好会などに入るのが良いでしょう。 ここでは

あえて取り上げませんが,興味のある方は問い合わせて頂ければ

ご紹介できると思います。 種類と見分け方については事項にて

少し説明する事にします。