ここでは,鉱物を鑑定・分類するにあたって必要となる知識を

簡単に説明します。 種類については色,産地,硬さなど様々な

分類方法がありますが,性質との兼ね合いなどから,ここでは 

化学組成別の分類を紹介いたします。  初めての方には少々 

難解かもしれませんが,まぁこんなもんだという程度で覚えて 

おけば良いと思います。  重要なのは性質で,これが鑑定の 

基本となるものですからしっかり覚えておいてください。   

尚,鉱物という物は動物や植物と違って,同じ物であっても全く

色や結晶が異なったりする物です。 従って,図鑑などは一つの

目安に過ぎず,あくまでも実物を見たり,性質を知っている事が

大切だという事を覚えておいてください。          



化学組成による分類

鉱物の性質や特徴



1,化学組成による分類

   1,元素鉱物
元素レベルで見た場合に1種類の元素で形成される 

鉱物。 元素でも化合物でなく合金状態の物もこれに

含まれる事がある。               

(例;ダイアモンド・鉄・銅・金・プラチナなど) 

   2,硫化鉱物
金属元素と硫黄元素が化合する物。 便宜上硫黄の 

かわりに砒素が化合した物もこのグループに入る  

ことが多い。 大抵は柔らかいものが多く,金属的な

光沢の物が多いように思う。           

(例;黄鉄鉱・硫砒鉄鉱・輝安鉱・辰砂など)    

   3,ハロゲン化鉱物
フッ素,塩素などのハロゲン元素を主成分とする 

鉱物。 種類はあまり多くないが,その性質や特徴

などから案外身近に認識できる物がある。    

(例;岩塩・螢石・シルビンなど)       

   4,酸化鉱物
酸素と結びついた鉱物は比較的に硬度が高く,  

光沢も強いものが多い。 産出量も多く精製も容易

である事から重要な鉱物資源として扱われる事が 

あり,宝石や装飾品になるものもある。     

(例;水晶・コランダム・ルチル・錫石・赤鉄鉱など)

   5、炭酸塩・硼酸塩鉱物 
炭酸ガスを主成分とするグループ。 硼酸塩もこれと

似た性質であるため同じグループとするのが一般的 

の様である。                  

(例;方解石・霰石・ボラックスなど)      

   6、硫酸塩鉱物
硫酸基を主とし、比較的柔らかかったり,水に溶け

やすかったりと保存に困難な物が見られる。   

(例;石膏・明礬・重晶石・ブロシャン銅鉱など)

   7、燐酸塩〜砒酸塩及びその他
燐酸基,砒酸基のほか、タングステン、バナジン、

モリブデン,クロムなどの塩基をもつ物がある。 

これらは勿論各種類ごとに分けても良い。    

ここでは便宜上まとめておいた。        

(例;トルコ石・燐灰石・緑鉛鉱・コバルト華など)

   8,珪酸塩鉱物
組成別では最も種類が多い。 比較的硬度が高く,

透明感のあるものが多く見られる。 珪酸基の結晶

構造によってさらに分類される事もある。    

(例;トパーズ・緑柱石・電気石・ジルコン・輝石類・

 ガーネット類・雲母類・長石類・沸石類など)  



2、鉱物の性質や特徴

鉱物の性質を知る事は鑑定に役立つほか,それを利用して  

採集する方法などもあります。  加工されたものであっても

判断できる性質もあるので,知っておけば宝飾品の鑑定等も 

多少はできたりするでしょう。              


1,色と輝き  2,硬さ  

3,割れ方   4,結晶の形

5,その他の性質


   1,色と輝き
鉱物の色は大抵の種類が一定の色を表す事はなく,例えば  

緑柱石は色によって宝石名が変わったりもします。     

(エメラルド=緑,アクアマリン=水色,ヘリオドール=黄,

 レッドベリル=赤,モルガナイト=桃,ゴシュナイト=無色)

発色の原因は含まれる金属元素や,光学的性質によるもの  

などです。 従って,色だけで鉱物種を判断するのは非常に 

困難ですが,他の性質とあわせて判断したりします。    

輝き,つまり光沢は,以下のようなものがあります。    

○金属光沢・・・文字どおり,光を通さない金属的な光沢。   

           (例;自然金,黄鉄鉱,輝安鉱など)   

○非金属光沢                        

  A,ガラス光沢・・・これも文字どおり。透明感のある光沢。

           (例;水晶,トパーズ,ガーネットなど) 

  B,樹脂光沢・・・透明感は少し鈍いが,温かみがある。  

           (例;琥珀,トルコ石,鶏冠石など)   

  C,真珠光沢・・・いわゆるパール効果のような輝き。   

           (例;雲母,魚眼石,水亜鉛銅鉱など)  

  D,絹糸光沢・・・繊維状の結晶が集合した,絹糸のような 
           光沢。                
 
           (例;孔雀石,アルチニー石など)    

  E,ダイアモンド光沢・・・非常に強い輝き。ダイアモンドは
           原石だと以外に当てはまらない事がある。
           (例;閃亜鉛鉱,白鉛鉱,錫石など)   



   2、硬さ
鉱物の硬さは,堅さと区別します。 例えば,ゴムとガラスで

比べてみましょう。 まず,ハンマーで叩いてみるとガラスは

割れるがゴムは割れない。これが堅さで,ゴムはガラスよりも

堅いという事になります。 次にナイフで切ってみるとゴムは

簡単に傷つくがガラスにはつかない。 こちらを硬さといい,

鉱物の判定では硬度の高低で使われる事が多いです。    

この場合,ガラスはゴムより硬度が高いと判断します。   

   ○モースの硬度計                  

鉱物の硬さを表すのに使われますが,計測器がある訳でなく,

10種類の鉱物を硬さの順に並べただけの物で,硬度表と  

言ったほうが判りやすいかも知れません。         
硬度1 滑石
硬度2 石膏
硬度3 方解石
硬度4 螢石
硬度5 燐灰石
硬度6 正長石
硬度7 石英
硬度8 トパーズ
硬度9 コランダム
硬度10 ダイアモンド

ある鉱物の硬度を調べる時には,その鉱物と上の表にある 

鉱物とをこすり合わせてどちらに傷がつくかで判断します。

例えば,石英には傷をつけたがトパーズには傷をつけられて

しまった,という時は,その硬度は7.5(7 1/2)と表します。

その時,石英になんとか傷をつけられた程度だからといって

7.1とか7.2などとはせず必ずその中間という判断にします。

尚,10円玉は硬度約3とか,ナイフで傷がつかなければ硬度

6以上はあるなど,身近な物の硬度を知っておくと鑑定にも

役に立つでしょう。                  



   3,割れ方
ダイアモンドは硬度が高いだけでなく,堅さもかなりの物です。

ところが,ある一定の方向に割れやすいという性質があり,  

カットする際にそれを利用したりします。 鉱物にはしばしば 

このように平面で割れやすいという性質があり,中には2方向 

や3方向などに割れやすいものもあります。 この性質の事を 

「劈開」といって, 劈開の方向や程度によって鉱物の種類を  

判断できる事があります。 例えば雲母は,六角形の形に紙の 

ようにペラペラはがす事が出来ますが,これはこの方向に完全な

劈開があるためです。 方解石の劈開は3方向にあり,劈開で 

割ると歪んだマッチ箱(平行四辺形)のようになります。    

水晶には劈開はありませんが、ガラスを割ったときのような  

細かい波のような模様(貝殻状断口)が現れます。       

こうした特徴的な割れ方を「断口」と呼び,劈開と区別します。 



   4、結晶の形
鉱物は,オパール1種を除いて,どれも条件次第で結晶する 

可能性があります。  結晶の形は元素の繋がり方によって 

決まるのですが,1つの鉱物が1種類の結晶形とは限らず, 

方解石などは600以上もの形を報告した学者もいる程です。

それでも,代表的な形を知る事で種類を判断できます。   

以下に簡単に紹介します。                

結晶の種類
種別
特徴
属する鉱物
等軸晶系結晶軸が直交,等間隔となり,正8面体,立方体など比較的ころっとした物。金,ダイアモンド,ガーネット,黄鉄鉱など。
正方晶系結晶軸は直交するが,1つの軸は長さが異なる。 柱状,板状など。黄銅鉱,ジルコン,ルチルなど。
斜方晶系直交する結晶軸は全て長さが異なる。菱餅型,菱形柱状など。トパーズ,硫砒鉄鉱,金緑石など。
単斜晶系結晶軸の一つが直交しない。こちらも菱形や平行四辺形になる。輝石・角閃石の大半,石膏,紅鉛鉱など
三斜晶系結晶軸2本が直交しない物。単結晶では平行な結晶面がない。トルコ石,藍晶石,バラ輝石など
六方晶系便宜上,結晶軸を4つ持つ。六角柱,六角板状の物。水晶,緑柱石,雲母,電気石(トルマリン)など

また,小さな結晶が集まったりして特徴ある外観になるものも 

あります。例えばモコモコとイボのようになったり(玉髄、   

赤鉄鉱など),細長い結晶が放射状になったり(輝安鉱,孔雀石 

など),バラの花のようになったり(石膏,赤鉄鉱など)ととても

趣のあるものが見られたりします。             



   5、その他の性質
1,比重  水の重さを1として,同じ体積の鉱物の重さの比率  

      を言います。 鑑定だけでなく採集にも使える特徴で,

      砂金採りで行う「パンニング」は,金の比重が15以上 

      (純度によって違う)である事を利用したものです。  


2,条痕色  鉱物を粉末にすると,外観とは違う本質的な色を  

      見ることが出来ます。 これを「条痕色」といい,白い 

      陶器の板に鉱物をこすりつけて見ます。硬度が高い  

      と大抵白いようです。               


3、磁性  鉄を含む物などは,磁石にくっつく物もあります。  

      ひきつける強さの違いも判定基準になったりします。 


4,蛍光性  螢石や灰重石など、紫外線を当てると蛍光する   

      ものがあります。 鑑定のほか,鑑賞しても綺麗です。


5、薬品,炎色反応                      

      鉱物の組成によって,塩酸などで溶けたり,発泡する 

      ものがあります。 また,鉱物を粉にして燃やすと  

      元素によっては特徴的な色で燃えるため,鑑定に用い 

      られることもあります。              


6、産状   鉱物は化学元素の産物ですから,この産地では   

      この鉱物は出ない,あの鉱物とこの鉱物は隣り合って 

      出る事はないなど,ある程度条件的判断が出来ます。 


7、触感,臭い,味,その他                  

     手触りや臭い,少しなめてみたりなどもされる様ですが,

     かなり経験が必要なのと,なめたりすると危険なものも 

     あるので,あまりお勧めできません。   その他にも 

     宝石の鑑定に用いられる屈折率などの光学的性質や,  

     酸化した時のサビの色などでも判断できます。     



○詳しい説明は市販の本などを参照してください。 冒頭でも言った

 ように,実際に見て,触れることが一番だと思います。